結婚式レビュー

友達と結婚式の三次会に行くために歩いていた。
昔よく通った懐かしい道だ。
そのとき目の前に人影をかすめた。自転車を片手で持ち止まっている。
こちらを見ているようだ。…あのシルエットはまさか。
新郎の先輩ために用意した、プレゼントを握る手に汗を感じる。
友達が喋っている会話も上の空になる。
その人が近くなってくる。歩調を止めることもできない。
…違う、別人だ。
ほっとして、その人の隣を通りすぎていく。
友達は俺の変化に気づいている様子は無い。大丈夫だ。
何を恐れている。



今日久しぶりの友人に会った。4月から京都に帰ってきていたらしい。
会うのは二年ぶりくらいだろうか。随分大人になっているように感じた。
キレイになっていてびっくりした。
「そっちは社会人になってなんか変わった?」
聞かれて答える。
「何も変わってへん気がするな、まだ学生気分は抜けないかも。」
そう、まだ何も変わっていない。
昔の話をした。そして昔の事件の話もした。
気がついたらあの時自分がやったことは全部本当のことを話していた。
今までは本当のことを話すと自分が責められるんじゃないかと思って、
自分に都合のいい話を作っていたのだが、なぜか今日は本当のことを喋った。
喋ったあと、責められるのならそれでもいいか、と思った。
本当のことを喋ったのは初めてかもしれない。
「ずいぶんと深い心の傷を持ってるんやね。」
心の傷?俺が?まさか。
全然平然と過ごしているよ。
「平然としてたら、そんな人影なんかに怯えないよ。」
怯えている…?そうか…確かに怯えている。
ネタにして笑いとばしていたはずなのに。
いつのまにか俺にも傷がついていたのだろうか。
「忘れてもいいと思うよ。君は悪くないんだから。
ひょっとしたら自分が悪かったのかもしれないなんて思ってるかもしれないけど、
君は悪くないんだから。」
なぜか涙が出てきた。見ないようにしていたけど、それは見なかっただけで、
俺の中にはずっと残っていたものだったらしい。
許されるのを待っていたんだろうか。
でも責められたくないから誰にも言わずに取っていたものを。
悪くないって言ってほしかったんだ。
「変わらないとね。」
そう変わらないといけない。




ってな話をしているのかなぁ、と結婚式の3次会で飲みすぎてしんどいから喫茶店で休憩していたときに、隣のカップルを見ながら考えていた。
仮面人間の仮面が本当の顔だったっていう話ですね。